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タイには夜中の12時に到着。
ドン・ムアイ空港からタクシーでバンコク市内のホテルに向かうことにしたのだが、
1台のタクシーに4人分の大荷物と2人分のガタイを持つT蔵のおかげで、とんでもないスシ詰め状態となってしまった。
車に酔いやすくまたカラダが小さい私はT蔵が持ってきた釣道具一式と一緒に助手席に座ることになった。
T蔵の釣竿はさすが海人(ウミンチュ)だけあって本格的なものを何本も持ってきており、
黒いプラスチックの筒状の竿入れに収められており、私達はこの竿入れ“バズーカー砲”と呼んでいた。
この釣竿入れを見た運転手が「何だ?」と聞くので、T蔵は脇に抱え「ドカーン」バズーカー砲の真似をすると、
ただでさえミクロネシア人に間違われるようなコワモテの風貌なのに、
「ドカーン」などとするものだから、運転手は本気でビビッて2、3歩後ずさりをしてしまった。
余談になるが、T蔵はトンガに行ったときに、現地人からトンガ人に何度も間違えられた経験を持つ。
「アホ!乗車拒否されたらどうするの!」とバズーカ砲を奪い、中の釣竿を見せ、
「He is japanese fisherman」と告げると、ドライバーはホッとした表情を見せ、
ようやく車はホテルへと動き出したのだった。
しばらく走ると高速道路の料金所付近では紙吹雪がわぁっと舞っていた。
それはあたかも紅白歌合戦の大トリを締める、北島三郎の舞台のようでもあった。
私達の乗るタクシーも料金所のゲートをくぐると、
運転手はもらった領収書をその場でポイと窓の外に捨てて走り出した。
そう、紙吹雪は料金所を通過するドライバーが貰ったときからみんな捨てたものだったのだ。
高速道路に入ると運転手はT蔵におびえていたのがウソにのように、
目を輝かせサーキットの狼よろしくと言わんばかりに、飛ばしはじめた。
チラリと横目でスピードメーターをみると、なんとメーターは動いておらず測定不能。
120キロでようが200キロ出ようか0キロなのだ。
右に左に大きく揺れるためスシ詰めの車中では「うっ…」だの「ぎぇ〜」などの奇声がこだました。
ドライバーはそれを聞くと「うふふ」とうすら笑いを浮かべて、また加速するのである。
「T蔵があんな悪ふざけするから、報復されたんとちゃうの」
「そうだ、T蔵が悪い」
「T蔵あやまれ」
3人から一斉に攻撃されたT蔵は
「俺が悪かった。頼むから、安全運転しようや。セイフティー・ドライバー、ユー、ノウ?」
と声をかけたが、運転手は「オッケー」と脳天気に答え、やはり加速していたのだった。
このドライバーのおかげで、1時間かかるところを30分ほどでホテルに到着。
ロビーのレストランでご飯を食べて、おとなしく床につこう…と言っていたのに、
夜中の“何を言ってもおかしくて仕方ない時間”に突入してしまい、
たかがご飯食べるのに2時間以上もかかり、ベットに入ったのは、時間にして午前4時であった。
怒濤のタイ旅行は既にこの時から始まっていた…
(つづく)
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