◆アジアdeラリアット タイ漫遊記◆
長らくお待たせしました。アジラリ第3弾・熱風のタイ編の始まりです。
気長に更新されるのを待ってくださいね。

熱風タイ編・第1回 〜プロローグ〜

●えせチャンピオン

 12月の某日、「寒いのはイヤよねぇ」と急遽タイへ行くことになった。10日間のスケジュールは前半5日は首都バンコクで、後半5日はサムイ島で過ごす予定である。同行するメンバーは、私が”季節労働者”として沖縄の離島に滞在したとき知り合った連中で、ヘビー級ウチナンチューのT蔵(男)、一見、国籍・年齢・性別不祥に見える、埼玉県在住のGさん(男)、そして私の長年の友人Iちゃん(女)の計4名。彼女とタッグマッチを組んだ旅行では、行く先々で「お前らが通るとペンペン草も生えない」と言われ続けており、Iちゃんは以前1か月タイに滞在(逃亡)した実績がかわれての参加となった。そして、サムイ島から広島在住・超男前ダイビング・インストラクターのKさんが途中参加することになっている。超個性派が揃ったこの旅行、統一性、まとまりまるのでナシの連中に果たして団体旅行ができるのか?と一抹の不安がよぎったが、とりあえず最低共通項の『人間』だけを頼りにして、12月4日、16時に日本各地からおのおの関空に集合した。

 飛行機は行きがJALで帰りがTAI航空となる共同便の使用となった。昨年大韓航空を使用し、ソウル経由でタイに入ったIちゃんに言わすと、「おっとろしい贅沢」らしいが、それでもエアーだけで往復3万80000円という安さ。JALにコネを持つGさんはT蔵と2人でビジネスクラスにアップグレードし、離陸直後から高いお酒を頼んでは豪遊を楽しんでいた。
私とIちゃんは当初の予定通りエコノミーにおとなしく収まっていると、「昨日、日本の山口なんちゃらを破って世界チャンピオンになったタイ人ボクサーのうんちゃらくんちゃらがこの便に乗っています。座席は46Cで…」というアナウンサーが入った。
●香港・マカオ一生の旅

「チャンピオンやって」とIちゃんがつぶやくと
「そりゃプロポーズしとかなあかんがな」と私はこの後に起こることを知りもしないで、無責任にも応えていた。
 機内食後、本来T蔵とGさんが座る予定だった席を使って横になりかけると、この席に座ろうとしていた人の気配がした。見上げると、そこにはタイ人の男の子が2人、ニコニコと立っていたのだ。
「ここは空席のはずなのに…」と合点いかぬまま彼らに席をゆずると、なんとナンパが始まったのだ。
「タイのどこへいくのか、バンコクはどこのホテルに泊まるのか、バンコクに来たならガイドをしてやる」
と何かとしつこい。身体をすぐにくっつけてきたり、手を握ってきたりと下心丸見え。こんな奴らと一緒に行動すれば食われてしまうのは時間の問題。鼻がもげる病気や淋しくなる病気だってあり得る。タイ旅行が香港・マカオ一生のツアーになってしまうかもしれない。それは困る。
「泊まる所は決まってない」
「すぐにサムイ島へ飛ぶ」
などと適当に断っていたら、小太りの一人が最後の切り札を出すかのように無口な連れの男を指して
「he is champion!」と言うではないか。
さっきプロポースしなあかんと言っていたチャンピオンがなんと私達をナンパしているのである。ヒョエー〜。
●バレるウソならつくな!

 しかし、世界チャンピオンがなんぼのもんじゃい。タイごときで命を落としてたまるか!彼らをなんとか諦めさせようとして
「ビジネスにいる2人の男友達も一緒だ」というと、手を握っていた小太りマネージャーが
「恋人か?」と握っていた手を離した。ざまーみろ。さらに、話が年齢に及び、我らが
「27歳と28歳である(当時)」ことを伝えると、
「んぁー」とため息をつきながら、頭を抱え込んでしまったのである。おいおい、それは失礼やろ。そんなこともあって、奴らも“大和撫子獲得作戦”を他の日本女性にターゲットを変えることにしたようで、再び機内で女の子物色を始めた。
「しかし、いいのか?世界チャンピオンが機内でナンパなんて…。」
「タイのチャンピオン、日本女性も連続KOとか書かれるよなぁ」
などと今どきオヤジも使わないオヤジギャグを言い合っていた。
ところが、チャンピオンだと思っていた男が、実はチャンピオンの付き人ということが後で判明。
本物はしっかりと自分の席に座っておとなしくタイまで熟睡していたようだった。
エセチャンピオンにナンパされ舞い上がったバカ女2人…。

8時間ほどの飛行機を乗りタイのドン・ムアイ空港に到着。飛行機の扉が開いた瞬間に「むわぁぁぁん」とした南国独特の生温い風が入ってきた。夜中だというのに、いかにも暑そう…。
なのに、なのに、こぉぉんな暑い国への旅行だというのに、大阪からやってきたオヤジの集団はみんな無駄に厚着であった。下乗待ちしていた時、前に並んでいた皮ジャンを着ていたオヤジに
「なんで暑い国に来るのに、こんな皮ジャン着てるの?」と初対面なんてヘとも思わず聞いてきみた。

すると、オヤジは「だって母ちゃんはにはアメリカに行くって言ってるから」と返してきた。
はぁ?なんだってぇ?
「なんでそんなウソつくのさ」とこれまて初対面にも関わらず失礼なツッコミを入れると、
「大人にはイロイロあるのさ」とオヤジは汗をぬぎいながら答えていた。
嗚呼、まだそんなことを日本のオヤジたちはしているのかぁ!!
後頭部をピコピコハンマーで殴られたような情けない衝撃を私は覚えた。
ファーストクラスから出てきたT蔵に先程のオヤジの顛末を告げると、
「オレも今日、島を出る船に乗るときになって初めて旅行に行くってくるわと母ちゃんに言ったんだ。」と、ほざいてやがった。
はぁ?お前と言うヤツは。私らが後々島で会ったとき顔向けできないじゃないか!
「で奥さんはなんて言ったの?」
「“ナニ!?と一瞬怒ったものの、“で、いつ帰ってくるの?”って」
「で、いつ帰るって言ったのさ」
「…3日後…。」
はぁ?10日間の旅行ですよ。そんな、後で絶対バレるようなウソならつくな!
こうして怒涛のタイ旅行は幕を開けたのだった。

(つづく)

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